そらのちから
夏休みなのに電車は混んでいる。
なかなか座れず、入り口近くの背もたれに寄りかかる。
ふとした拍子に涙腺が緩みかけた。
「疲れてるなあ」と思った。
何がしたいわけでもない。もう、誰からも時間や気力を奪われたくないと思った。
この3連休も自分のしたいことはほとんどできなかったわけだし。
このまま梅田でカフェに行くか、一人カラオケをするか、散々迷った挙句
わたしは帰ることにした。
息子が待っている。ご飯は炊けている。おかずは何にしようか。
食事のことを考えると少し気力が戻ってきた。
改札を出て、バイク置き場に行く間に、昼食で食べきれなかったポテトを口に入れるともう少しだけ元気になった。わたしはまだ、大丈夫。
今の家のことを思い出すと帰りたくなる。住み始めてまだ二カ月も経っていないのに、懐かしくて静かで、ほっとする。
長らく5人で暮らしていたから、二人の暮らしは負担がない。
息子との距離感もいい。
夕食が終わってからTwitterを見ていると「火星大接近」が話題になっていた。
方角は、リビングの窓のほうだ。
団地群だからどうせ見えないだろうと思って窓を開けてみたら
目の前に火星があった。
美しく輝いていた。
空を見上げると、それだけでほっとできる。
わたしから何も奪わない。
空は、ただそこにある。
そこにあるのは、空と私だけ。
人の要求に応えてばかりで、心があちこち彷徨っていても
空を見ると自分の体に心が戻ってくる気がする。
誰もが必死で生きてるんだよね。
自分のためだけに。
だから、誰も何も遠慮しちゃいけない。
押し殺していいことなんてない。
自分を満たすことを一番にしていこうね。