震災の記録(2)
玄関は熱湯で水浸しになっているが
マンションの上の給水塔からも水が落ちてきていた。
震災より水害が危ない。
そう思って慌ててマンションの駐車場に降りた。
階下の人たちはそれほどでもなかったのか、ゆっくりゆっくりしている。
7階の人は、マンションのコの字型の接続部分が外れそうだよ、気を付けて!と教えてくれた。マンションが倒壊するかもしれないと恐れた。
男の人たちは仕事に出ていて、ほとんど残っていない。
管理人さんも電車が止まってこれないらしい。
給水塔の水が止まらない。水の流れる音だけが響く。
女性同士、声を掛け合って過ごしていた時間は覚えていない。
ようやく水が止まった。
部屋に戻るのはとても怖かったけれど、「戻ってくる」と息子たちが言うので
一緒に非常階段をあがっていった。
案の定、水浸しになっている。
「あ、これ、6階に迷惑をかけるやつや~」と思う。
ここで、次男がファインプレーをした。
電気温水器の水を止めたのだ。
「お母さん、止めたで!」
それでも、家じゅうに水が回っていた。
しかし、まだ余震が怖い。
シングルの私は、仕事に行かなければならない日が来る。
そのために、どうしても自分の着るものだけは確保しなければならなかった。
ゴミ袋に無事な服を詰めて車に積んでいった。
必要と思われるものも車に積んだ。
時間が経つにつれ、水に濡れる物が増えていく。
(つづく)