ブルーマロウ
盆が明ける。
お墓参りもしない私は、それでも父の存在を感じていた。
光の中に、闇の中に、私の中に。
何を失っても、失われないものがある。
人が悲しみから立ち上がる時、目には見えない存在がさりげなくサポートしているのだと思う。
ブルーマロウというハーブがある。
そもそも、息子からバターフライピーという青い抽出液が作れるハーブが欲しいと言われていたのだが、大阪の百貨店にも置いていなかった。
代わりにブルーマロウを買って帰った。
お湯に入れると鮮やかなブルーになる。
その後、しばらくすると神秘的な紫色になり、レモンを加えるとピンクに変わる。
今日のラストは、海のような深緑と桜ピンクの寒天ができた。
まるで大人版「夏休みの自由研究」のようで、夜中にこうして好き勝手にお菓子を作っていることの自由さに酔いしれている。
今日のメッセージは、「下に行こうとするな」だと私は受け取った。
私は、自分がマウンティングされることで、相手を喜ばせようとしていた。
相手が心地いいように自分を下げることが、愛だと勘違いしていた。
いつの間にか、私はマウンティングする人を見て「あれ?ここがおかしいよね」と冷静に判断していることに気づいていたし、うっかり上に立って怒った時に、相手が怯むことが増えていた。
この人たちは、わたしより知らないことが多いのだとわかった時の衝撃。
私はもうマウンティングしたい人を喜ばせることはできない人間になったのだった。
どう頑張っても、わたしはあなたの上にいる。
下に行ってあげることはできないわ。ごめんね。
そうつぶやいて、私は相手を打ちのめす旅に出ることにした。
下手に出ることで生き延びようとしたけれど、それはもう通用しない。
教えられることは教えていかねばならない。
その責任を果たさなければならない。
それが私のこれからの人生になるのだと。
自分という色が、まるで化学反応のように変わっていく。
沈んだ色から鮮やかな色に。
目立たない色から目立つ色に。
人の影に隠れることはできない。
父親は、私に課題を残した。
残したまま空に還った。
甘えられなかった私は、ねじれた甘えをまき散らして生きてきた。
私を守ってくれている形のない父親のおかげで
私は甘えることを覚えた。
そのための大きな出来事をたくさん用意してくれていた。
バイクで走ると夜風が気持ちいい。
盗んだバイクで走らない年齢になったからこそ、楽しめる暴走がある。
失った時間を取り戻していくのだ。