移り変わるもの
雲が好きだ。
イケメンも好きだけど、空を見飽きない。
記憶のない頃から、田んぼの真ん中にほったらかしにされて
雲ばかり見ていたのだろう。
空は母親代わりだった。
懐かしく温かい。
雲が次々と形を変える様を見ているだけで
一日が過ぎればいいのにと思う。
だから、わたしは空の写真ばかり撮ってる。
昨日私は梅田にいた。
天神祭りの本宮で
浴衣姿の女性をちらほら見かけた。
みな、桜橋駅に向かう途中で
環状線のホームはいっぱいだった。
わたしはいつもの帰り道を避け
遠回りをしたので
いくぶん余裕があった。
いつもなら、家で天神祭りの花火の映像を見ているところだ。
なぜか大阪にいたかった。
天神祭りの夜に大阪にいる。それがなんとなく特別なように思えた。
結局、梅田のビルの中は、花火の音も聴こえないし
花火の欠片も見えなかった。
お腹がいっぱいになって眠くなって帰った。
私がこの、大阪駅を通過して通勤しているのは
空に漂う雲と同じ、人の流れを見たいからだと思う。
動いている、美しいもの。
職場の近所に住んでいたら、決して目にすることのない人たち、景色がある。
私が動く、動くものを見る。
それが私の人生なんだなあと、半分を過ぎて思う。
小さい頃に住んでいた家は、今はなく
結婚してからも3度住まいを変わった。
故郷はない。
変わらないものは、何もない。
立ち止まらずに歩いていきたい。